コラム

仮想通貨に金融商品取引法が適用か?|一体何が変わるのかを考える

仮想通貨に金融商品取引法が適用か

こんにちは、ジーン(@btcgene3)です。

今回は、仮想通貨仲間のうめ吉さん(@umekichi8hvt)による寄稿記事の第7弾です。

仮想通貨に「金融商品取引法」が適用されるかもしれないというタイムリーな話題を取り上げていただきました。

ジーン
ジーン
ここからうめ吉さんの記事です。お楽しみくださいませ。

どうも、うめ吉です。
関東は梅雨明けで夏本番みたいですが、九州は思いっきり台風が来てます。
休みなのに台風直撃でクッソ暇な時に見逃せないニュースが飛び込んできました!

仮想通貨規制の移行を検討 改正資金決済法から金商法へ 利用者保護を強化

金融庁が仮想通貨交換業者を規制する法律を現在の改正資金決済法から金融商品取引法に移行する検討に入ったことが2日、分かった。改正資金決済法は交換業者を登録制にすることなどを定めているが、交換業者の経営が悪化した場合に顧客の資産を保護する仕組みなどが不十分。規制を証券会社などに適用される金商法に基づいた内容にすることで、利用者保護の強化につなげる。

引用:産経ニュース

今までは仮想通貨は「改正資金決済法」という法律が適用され、主に電子マネーのような決済手段として使われるという位置づけだったので、わりとゆるーい感じの規制だったんですね。

この流れが変わったのがあの「コインチェックNEM盗難事件」です。

ここで当時の時価で580億円とも言われる仮想通貨が取引所のセキュリティの甘さを突いて盗まれたことで、金融当局はやっと本気を出し始めたんですねー。

改正資金決済法では仮想通貨交換業は登録制で、登録の申請が受理されていなくても申請を出していたところもとりあえず「みなし業者」として存続していたわけです。

しかしながら、事件後には登録業者、みなし業者ともに相次いで行政処分を受け、一気に業界の健全化に向かう形に。

その流れの中で、2018年3月に設置され、2018年7月3日現在で4回ほど開催された金融庁主催の「仮想通貨交換業などに関する研究会」の中で議論されている新たな規制案の内容のようです。

もちろん案なんで実際に金融商品取引法(以下、金商法)の適用になると決まったわけではないんですけど、可能性としては非常に高いんじゃないかと思ってます。

今回はその金商法が適用されると一体どうなるのかを、いつもの妄想も踏まえて解説していきたいと思います。

金融商品取引法(金商法)って?

金融商品に対して主に利用者保護と利便性の向上のために証券取引法からさらに踏み込んだ法律で、2006年に成立し公布されました。

内容は具体的に、

  1. 投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制(いわゆる投資サービス法制)の構築
  2. 開示制度の拡充
  3. 取引所の自主規制機能の強化
  4. 不公正取引等への厳正な対応

の4つの柱でできています。(金融庁HPより引用)

うーん、なんとなくニュアンスはわかるけど、いまひとつピンとこないっすねー。
もう少し掘り下げていきましょうか。

①投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制(いわゆる投資サービス法制)の構築

ようは安定した金融商品の「預金」や「保険」とは違う、元本割れリスクのあるようなものは投資性の強い金融商品ってことで、

  • 取引のリスクを明確に説明する
  • 利益の見込みについて誤認させるような表示をしてはいけない
  • 手数料を明確に表示する
  • 嘘をついたり、不確実なことを事実として伝えない
  • 頼んでもいないのに積極的に勧誘しない
  • 失補てんをしない
  • 投資の助言、預かり資産の運用、顧客資産の管理について制限する

などが適用されます。

②開示制度の拡充

これは、有価証券を上場している企業に対して適正な投資判断ができるように決められた情報を必ず出しなさいっていう制度(ディスクロージャー制度)ですね。

具体的には、有価証券を発行する際に投資を募るための発行市場への開示と、流通されている場合に投資家に向けて行われる流通市場への開示の2種類に分かれます。

発行市場への開示

有価証券の募集または売り出しをする場合に、発行される有価証券の情報(証券情報)と発行する企業の情報(会社情報)を合わせた「有価証券届出書」と、有価証券の発行者情報や有価証券の詳しい内容について記載された情報などが載せられた「目論見書」を開示しなければなりません。

ようは、有価証券を売りまっせ〜って時に判断する材料を出せよってことですね。

流通市場への開示

すでに市場で流通している有価証券を買うための判断基準として開示するもので、四半期ごとに会社の業績情報を出したり、財務報告について内部統制制度を導入して監査法人から監査を受けて適正な情報を出したりするようなことです。

すでに上場したりして売られている有価証券を買う人のための情報ですね。

投資家は事業の未来に投資をするわけだけど、とりあえず現状どうなっているのかをちゃんとわかりやすく情報として出しなさいってことです。

③取引所の自主規制機能の強化

取引所は株式会社として運営している場合、取引所自体も営利目的(お金儲けがしたい)のために、公正性・透明性確保という業務との利益相反が生まれる可能性があることから、自主規制業務を取引所の業務と分けて運営する必要が出てきます。

なので、自主規制業務を「自主規制法人」に委託したり、同一法人内に独立性の高い「自主規制委員会」を置いて、法令遵守を徹底してくださいってことですね。

④不公正取引等への厳正な対応

いろんなルールを決めていても、罰則がなかったり緩かったりすれば多少のリスクを冒してもルールを破ろうとするやつがあらわれる可能性がありますよね?

公正でない取引などに関して証券取引法にも罰則はあったのですが、金商法によってさらに罰則が重くなりました。

具体的には、

  • 不公正取引
  • 風説の流布(ウソやウワサを流す)、偽計(人を欺く)、暴行、脅迫
  • 相場操縦

これらには懲役10年以下、個人では1000万円以下の罰金、法人では7億円以下の罰金が課せられます。

  • インサイダー取引

などには懲役5年以下、個人では500万円以下の罰金、法人では5億円以下の罰金が課せられます。

とくに風説の流布や相場操縦は個人でも注意が必要になるので、よーく調べておいた方がいいかもしれません!

金商法が仮想通貨に適用されるとどうなる?

さて、ここまでの説明でだいたいわかったところもあるかと思いますが、金商法が適用されるとより一層の健全性が求められることになります。

取引所は顧客資産をガチガチに管理しないといけないし、販売手数料として取られているスプレッドもきちんとした説明を明記する必要がでてきますね!

トークンを売る時に、元本の◯◯倍は確実!なんて煽って売るなんてもってのほか。
有料の投資セミナーや流行りの有料グループなんかも投資助言業として規制の対象になる可能性が。

あと、仮想通貨では特に規制されていなかったツイッターなどでの風説の流布(ウソやウワサを流す)や買い煽り、売り煽り、その他特定のコインについて相場に大きな影響を与えるような発言なんかもダメになるんじゃないかな。

取引でも見せ玉や仮装売買などのチャートに影響を与える相場操縦は禁止になるでしょう。
この辺は個人でも気をつけないといけないですね!

開示制度が仮想通貨に適用されるとどうなる?

発行主体のないパブリックプラットフォームは普及促進のための財団の活動や財務状況なんかを開示することになってくるんでしょうか。

世界中が繋がっている仮想通貨なので、そのあたりはどうなるかさっぱりわからないっすね。

企業トークンなどについては、情報開示がすすむことからICOを行う場合に発行する企業の情報や目論見書にあたるホワイトペーパーなどはかなり作り込まないといけなくなります。

もちろんコピペしただけのようなものは通らなくなってくると思います。

また、その後も四半期ごとにプロジェクトの進行状況や事業収支などを公開しなければならなくなえります。

コストや手間がかかる反面、健全性は高まると思います。

ICOプラットフォームについては容易にICOできなくなる事と、より一層のノウハウが必要になってくることから先行者優位になってくるはず!

金商法に対応するためコスト、技術、人材などの確保が課題に

仮想通貨取引所の運営は今までベンチャーが主体となってやっていましたが、去年あたりからSBI、GMO、DMMなどの大手が参入してきました。

また、ネム盗難事件を受けてコインチェックも経営体制の変更を余儀なくされ、マネックス証券によって新体制に移行しました。

これからは金融機関並みの体制を作っていくとなるとかなりのコストもかかるし、金融機関で経験のある技術者や管理者などの人材を引っ張ってこないと運営が厳しくなってきます。

ベンチャーもそのままではなかなか存続できなくなるので、既存の金融機関との業務提携や資本の受け入れなどが今以上に進むはずだし、小さいところはだいたい証券会社なんかに買収されていくことになりそうです。

そして金商法が適用されたことで仮想通貨の派生商品(デリバティブ)も増えていくでしょう。

産経のニュースでも上場投資信託(ETF)が誕生するんじゃないか、なんて話も書かれていましたね!

今後の流れとしては?

引き続き「仮想通貨交換業などに関する研究会」の中で議論されていくことになります。

おそらく改正資金決済法の適用のままでいくわけにもいかないので、金商法の適用になるんじゃないですかね。

ただ、まだしばらくかかるのでその間は業界団体の自主規制という形で乗り切るんでしょう。実際は自主規制もほとんど金融当局に権限があるんでしょうけど。

むしろ今までが、取るに足らない小さな市場すぎて金商法なんて適用させる必要もなかったんだろうなあと…それがやっと金融商品として認めてもいいかなっていうぐらいになってきたって事ですね。

ここから安全性と利便性が担保されることでやっと、大口の機関投資家が参入できる状態になっていくんでしょうが、それはまだもう少し先の話になりそうです。

そして金商法の適用でもう一つ期待されるのは、仮想通貨税制についてだろうと思います

金融商品として認められたら税制も雑所得から20%の分離課税になる可能性は高いですよね〜もちろん、うめ吉もそこには期待してますよ!

多分、金融当局のほうは分離課税にしたい思惑も多少あるんじゃないかなと思うんだけど、国税がウンと言わないんじゃないですかねえ。特に金融庁長官が変わったタイミングなので実績は作りたいでしょう。

まだどうなるかはわからないけど、一歩進んだ感じがしますね!
少しでも早く、仮想通貨に明るい未来が見えればいいなーと思います!

盛りあげろ〜わっしょいわっしょい仮想通貨(ノ’ω’)ノ
うめ吉でした。

※ちなみに、記事を書いた後に金融庁からは「仮想通貨規制が改正資金決済法から金商法への移行検討という事実はない」と回答がありました。
金商法適用が決まるまでは公式にはこう答えるしかないんじゃないかなと思います( ・ε・)

あとがき

仮想通貨に「金融商品取引法」が適用されることで、ETF(上場投資信託)の誕生や源泉分離課税の導入の可能性が高まります。

仮想通貨投資家にとっては、プラスになる部分も多そうですね。

ただ、金融庁も現時点では公式に否定していますし、すぐにという話ではなさそうです。

2018年上半期は仮想通貨にとっては冬の時代が続きましたが、下半期は面白くなりそうですね。

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うめ吉さんの過去記事も合わせてご覧ください。

 第1弾:仮想通貨バブルは終了しました
 第2弾:仮想通貨で銀行がなくなる日
 第3弾:仮想通貨による法定通貨の暴落
 第4弾:仮想通貨が有価証券になる日
 第5弾:仮想通貨に見る『イノベーションのジレンマ』
 第6弾:仮想通貨の共同幻想とエコシステム

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元バイオテクノロジー分野の研究者。事業計画、経理・税務、ブランド戦略、Webマーケティングから営業までいろいろやります。2017年からは『仮想通貨』にどハマり中。このサイトが皆さまのお役に立てれば幸いです。 ちなみに、アイコン画像は遺伝子(gene:ジーン)の模式図。
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