基礎知識

仮想通貨の税金|日本の仮想通貨税制の現状整理と問題点について考える

仮想通貨の税金

「日本の仮想通貨の税金は高すぎる」と多くの仮想通貨投資家は嘆いています。

それもそのはずです。

現在の仮想通貨に係る利益は雑所得に分類され、給与所得などの他の収入と合算して、その額に応じて税率が課させます。

いわゆる累進課税です。

そのため、所得税は最大45%、そこに一律10%の住民税を加えて、最大55%が仮想通貨の利益から税金として持っていかれます。

「億り人」を夢見る仮想通貨投資家は、実際には2億円以上の利益を生み出さないと手元には1億円以上の現金が残らないわけです。

今回は、現在の仮想通貨に係る税金の仕組みを整理する共に、日本の仮想通貨税制の問題点を考えてみます。

また、仮想通貨やブロックチェーン産業において世界をリードする先進国であるために必要なあるべき仮想通貨税制について考察してみます。

仮想通貨の税金の仕組み

まずは現時点での日本の仮想通貨に係る税金がどのようになっているのかを改めて整理してみます。

総合課税制度

総合課税制度とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算するというものです。

引用:国税庁HP

仮想通貨は総合課税制度の中にあります。

所得税法では、所得の性格によって所得を10種類に分類しています。

総合課税制度の対象となるのは、10種類の内、退職所得と山林所得を除いた以下の8種類です。

(1) 利子所得(源泉分離課税とされるもの及び平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等を除く。)
(2) 配当所得(源泉分離課税とされるもの、確定申告をしないことを選択したもの及び、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当について、申告分離課税を選択したものを除く。)
(3) 不動産所得
(4) 事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く。)
(5) 給与所得
(6) 譲渡所得(土地・建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く。)
(7) 一時所得(源泉分離課税とされるものを除く。)
(8) 雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く。)

引用:国税庁HP

雑所得とは?

雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。

引用:国税庁HP

ざっくり考えると、他に分類できない所得はひとまとめに全て雑所得ということですね。

仮想通貨の利益は、雑所得にあたりますので総合課税制度の対象となります。

仮想通貨の利益は雑所得

 ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。

このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。

引用:国税庁HP

国税庁のタックスアンサーからの引用です。

「ビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象」とありますが、この中の「使用」という言葉が重要です。

ビットコイン(アルトコインを含む)の使用とは主に以下を意味します。

  • 仮想通貨と法定通貨との交換
  • 仮想通貨とモノとの交換
  • 仮想通貨同士の交換

つまり、この3パターンで仮想通貨を使用した場合には、その利益は雑所得として課税されることを意味します。

総合課税制度と申告分離課税制度

日本の仮想通貨税制の問題点に入る前に、総合課税制度と申告分離課税制度の違いについても簡単にご紹介します。

申告分離課税制度とは?

所得税は、各種の所得金額を合計し総所得金額を求め、これについて税額を計算して確定申告によりその税金を納める総合課税が原則です。

しかし、一定の所得については、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し(この点が総合課税制度と異なります。)、確定申告によりその税額を納めることとなります(この点が源泉分離課税制度と異なります。)。
これが申告分離課税制度です。

申告分離課税制度となっている例としては、山林所得、土地建物等の譲渡による譲渡所得、株式等の譲渡所得等、平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等に係る利子所得及び一定の先物取引による雑所得等があります。

引用:国税庁HP

申告分離課税制度は、他の所得とは分離して、収入金額等に一定の税率で税金が課税される仕組みのことです。

投資の分野で言うと、すでに株取引やFX(外国為替証拠金取引)は申告分離課税になっているため、株やFXの取引をやっている方はなじみ深いと思います。

税率の違い

総合課税制度と申告分離課税制度では、税率が大きく異なってきます。

総合課税制度の税率

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

上は、総合課税制度における所得税の税率の一覧表です。

所得税は収入に応じて課税率がアップする累進課税です。税率は、5%~45%の7段階に区分されます。

これとは別に住民税が一律10%課されます。

そのため、利益が多額になれば、所得税45%+住民税10%を合計して、最大55%が課せられることになります。

申告分離課税制度の税率

申告分離課税制度の税率は一律で明確です。

株式等の譲渡所得等に対する申告分離課税の税率は20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率です。

モデル別比較

一般的なサラリーマンの平均年収は500万円と言われていますので、会社員における年収500万円ベースでの仮想通貨の利益別のモデル比較をしてみます。

モデル1:給与所得500万円・仮想通貨の利益15万円

雑所得については、20万円以上が確定申告の対象となります。

そのため、仮想通貨の利益が20万円未満の会社員では総合課税制度の雑所得の方が申告分離課税制度よりも有利になります。

モデル2:給与所得500万円・仮想通貨の利益300万円

給与所得が500万円、仮想通貨の利益が300万円なので、「課税される所得金額」は800万円になります。上の表に当てはめると、税率は23%です。

800万円×0.23-636,000円=1,204,000円 となります。

これとは別に住民税が10%課されますが、具体的な計算方法については少し煩雑なためここでは割愛いたします。

ここで敢えて所得税に係る計算式を解説した理由ですが、総合課税制度の雑所得においては、給与所得+雑所得の合計額が「課税される所得金額」になることを改めてご紹介したかったからです。

会社員が仮想通貨投資を行う場合、給与所得がベースにあるために仮想通貨で数百万円の利益を出しただけで、総合課税制度の雑所得の税率は申告分離課税制度の20.315%を簡単に越えてしまい、不利になるのです。

※実際に税金計算を行う際、「課税される所得金額」については家族構成、医療費や保険料の支払などから生じる所得控除を考慮する必要性があります。

※ここでは簡便的に「給与収入=給与所得」としています。

日本の仮想通貨税制の問題点

日本の仮想通貨の税金の仕組みにはいくつかの問題点があると考えております。

上で紹介した仮想通貨の利益が生じる3つの使用方法のパターン別に問題点と一仮想通貨が考える日本の仮想通貨税制のあるべき姿を考えてみます。

パターン1:仮想通貨と法定通貨の交換

一番理解しやすいパターンがこれです。

例えばビットコインを50万円で購入して100万円で売却した場合、購入額と売却額の差引である利益50万円に対しての税金になります。

パターン1の問題点

仮想通貨と円との往復で取引をするケースでは、取引回数にもよりますが税金計算は比較的簡単になります。

ここで問題になるのは、仮想通貨の利益が総合課税制度の雑所得に当たることです。

雑所得であるデメリットは主に以下の3点になります。

  • 利益が多額になると税率が高くなる
  • 確定申告が面倒である
  • 損が繰り越せない

これらは株投資家等の仮想通貨投資への参入の妨げになっていると想定されます。

分離課税があるべき姿か?

あるべき姿は分離課税制度へ移行であると考えています。

ただ、その道のりは簡単ではなさそうです。

他の金融商品として、FX(外国為替証拠金取引)を例に考えてみます。

FXは2000年ごろに仕組みができ、2005年に金融先物法が改正されて、FX業者の登録が始まりました。

2009年に信託保全が義務化され、分離課税制度に移行したのは2012年です。FXが分離課税制度に移行するまでに10年以上かかったことになります。

少し前ですが、2018年6月25日、麻生財務相は仮想通貨の分離課税への変更に対して、否定的な発言をしています。

麻生財務相は新しい文化などに対しては比較的柔軟な方だという認識があったために残念に感じました。

今後の展開に期待したいと思います。

パターン2:仮想通貨とモノとの交換

2つ目のパターンは仮想通貨とのモノとの交換です。

例えば1ビットコインが50万円の時に0.1ビットコインを5万円で購入したとします。

そして、1ビットコインが100万円の時に10万円のノートパソコンをこの0.1ビットコインで購入します。

ここでは、0.1ビットコインが5万円→10万円になった時にモノを購入しているのですが、ビットコインの値上がり分の5万円に税金が課されることになります。

パターン2の問題点

仮想通貨の実用化の大きな柱として決済機能があります。

ここで問題になるのは現時点では少額決済であっても仮想通貨とモノとの交換では課税の対象になりうる点です。

少額決済は非課税にするべきか?

あるべき姿は少額決済は非課税であると考えています。

仮想通貨を広めていくためには、外せないことであると考えています。

具体的には、1回の決済が20万円以下の少額決済においては非課税を検討すべきであると考えています。

パターン3:仮想通貨同士の交換

3つ目のパターンは仮想通貨同士の交換です。

例えば1ビットコインを50万円で購入し、1ビットコインが100万円の時に1枚5万円のイーサリアムを20枚購入したとします。

ここでは、1ビットコインが50万円→100万円になった時にイーサリアムを購入しているのですが、ビットコインの値上がり分の50万円に税金が課されることになります。

パターン3の問題点

仮想通貨の税金計算を複雑怪奇にしている最大の理由が仮想通貨同士の交換です。

円で買ったビットコインでアルトコインを購入する場合はまだ理解しやすいです。

しかしながら、海外取引所においてアルトコインで他のアルトコインを購入した場合などはもはや意味不明になってしまいます。

円に戻した場合に初めて課税する?

あるべき姿は円に戻した場合に初めて課税対象とすることであると考えています。

仮想通貨投資家はどのみち円に換えないと税金は払えないわけです。

円に戻して初めて課税されるようにした方が効率が良いのではないかと考えています。

まとめ

現在の日本における仮想通貨税制には様々な問題点があると考えています。

日本は資源に乏しく、しかも少子高齢化が待ったなしの国です。

現在の日本はかろうじて世界経済を牽引している国の一つです。しかしながら、この地位をいつまでも維持できると考えている若い世代は少ないと思います。

日本が世界経済において存在感を示し続けるためには、新分野に挑戦し続けることが重要であると考えています。

仮想通貨やブロックチェーンに注力することが必ずしも正しいとは限りません。

ただ、新分野への挑戦の一つとして、まずは足元の仮想通貨税制の見直しを検討していただきたいものです。

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ジーン
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ジーン
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元バイオテクノロジー分野の研究者。事業計画、経理・税務、ブランド戦略、Webマーケティングから営業までいろいろやります。2017年からは『仮想通貨』にどハマり中。このサイトが皆さまのお役に立てれば幸いです。 ちなみに、アイコン画像は遺伝子(gene:ジーン)の模式図。
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